にっきのほんばん(2024年11月)

にっきのほんばん

気が付いたら毎週美術館に行っていた。これまで博物館は好きだったけれど、美術館へはあまり行ったことがなかったのに、最近なぜかよく行っている。愛知県美術館で開催されていた相国寺展に至っては、前期展示と後期展示の2回行った。キービジュアルにもなっていた鶴の絵(『鳴鶴図』文正)と孔雀の絵(『牡丹孔雀図』丸山応挙)がそれぞれ前期と後期のみの展示だったため、どちらも見たくて2回行った。どちらの絵も素晴らしかったのだが、他の通期展示されていた作品を2度見ることができたのも良かった。さらに、愛知県美術館のコレクション展(愛知県美術館が所有している作品の展示)には以前行ったことがあったため、ここでも以前見た作品を再度鑑賞することができた。同じ作品でも最初とは違う感想を持ったり、コレクション展では別のテーマが設けられていたり、同じ本を再読するときのような面白さを感じた。

ある日偶然に画家の東郷青児の存在を知った。美術に詳しい人には有名な画家だとは思うが、私は名前も知らなかった。初めて東郷の『望郷』の写真を見たとき、あまりにも現代的な絵に見えた。しかし、この絵は1959年に描かれたので、65年前の作品ということになる。まるでコンピュータで描かれたような、なめらかなグラデーションに一気に惹かれた。その衝撃からぜひ直接見たいと思っていたところ、東京のSONPO美術館の所蔵品である『望郷』がちょうど神戸の美術館で特別展示されていることを知った。東京よりはずっと行きやすい。これは行くしかないということで、絵の存在を知った週の土曜日にさっそく見に行った。冷静に考えれば急すぎる展開だけど、このくらいフットワーク軽く行動したいと日頃から思っているから、その目標通りに動くことができたことに満足している。実際に見ることができた東郷青児の作品はどれも本当に肌や衣服のグラデーションが秀逸で、油絵とは思えない、だけど確かに油絵で描いてあった。そして色の濃淡だけで立体的だと感じる、人間の目と脳の不思議を体感しているな、と思った。

来月はどんな一か月になるだろうか。自分でも予想がつかなくて楽しみである。

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