こんにちは!マキさんです!
図書司書の勉強をしていることもあり、『夢見る帝国図書館』を読みました。
あらすじ
作家である「わたし」と喜和子さんは上野公園のベンチで出会う。喜和子さんは終戦直後、上野に住んでいたようで、帝国図書館にも思い入れがあるようだが…。
感想
私は普段あまり小説を読まない。ある日書店で、通りすがりに目に入ったタイトルに惹かれて購入。帝国図書館に関するもの、しかも「夢見る」ってどういうことだろう?と思って手に取った。
全体を通しての感想としては、なんか不思議。悪い意味ではなく、不思議な感じを抱えたまま終わっていった。これが「夢見る」ってことなんだろうか。
このお話は、「わたし」と喜和子さんの物語が進んでいく中に、「夢見る帝国図書館」というもう一つの物語が進んでいく。作中作といえばそうなのだが、帝国図書館の物語は割と唐突に始まり、また「わたし」と喜和子さんの物語に戻る。そしてまた帝国図書館の物語が現れる。これがまず不思議。登場人物のうちの誰かによる作品なのかもしれないが、言及はされていない。
ちなみに、この帝国図書館の物語はほぼ史実だと思うが、タッチが軽妙で読みやすい。人物の会話で進んでいく部分も多く、その口調からキャラクターや表情が目に浮かぶよう。福沢諭吉がビブリオテーキを提唱して以降、時代の波、特に戦争に翻弄されながらもいくつかの形態を経て帝国図書館が生まれ、また翻弄され、終戦後に国立図書館と改称されるまでの流れを知ることができる。司書の科目「図書・図書館史」の近代日本の章と合わせて読むと面白い。(個人的には、美濃国大垣藩(現在の岐阜県大垣市)出身の和田万吉が登場し、地元に近いところ出身の人が東京帝国大学(現・東京大学)の図書館長だったと知って衝撃を受けた。和田万吉さんについてもっと調べてみたい。)
喜和子さんの物語も、なんだかつかみどころがないような喜和子さんに、「わたし」も読者も翻弄されるが、それは嫌な感じはしない。不思議だけど、リアリティがあって、温かい物語。
当時帝国図書館だった建物は、現在「国立国会図書館国際子ども図書館」として利用されている。東京に行ったら是非訪れたい。
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